2018/04/25

10周年記念コンサートを終えて

先日、教室の10周年記念コンサートを無事に終える事ができました。お忙しい中、来ていただいた皆様ありがとうございました。ケントの方から遠路はるばるお越し下さった方もいらっしゃったようです。そして出演者の皆様お疲れ様でした。

今回のコンサートでは生徒・関係者と演奏致しましたが、いつもの発表会とはちがった位置づけでした。したがって、プログラムも私たちの演奏したいもののなかでも、発表会などでは中々出来ないようなものを選びました。

プログラム:
第一部
  • (イントロダクション)ウェストミンスターチャイム (ピアノ四手連弾)
  • W. A. モーツァルト:魔笛 (ピアノ四手連弾、ナレーション付)
第二部
  • I. ストラヴィンスキー: Eight Instrumental Miniatures (鍵盤ハーモニカ合奏 4パート)
  • E. サティ:Nine Children’s Pieces — Childish Small Talk, A Child’s Quaint Ways, Tiresome Pranks (ウクレレ・ギター&ナレーション)
  • E. サティ:Cinema (鍵盤ハーモニカ合奏 4パート)

魔笛は、言わずと知れた、モーツァルトの生涯最後のオペラ作品です。今回は英語でのナレーションを挟みながら、全13曲で構成された4手連弾の編曲で演奏しました。各曲共に個性豊かなキャラクターに結びついているので、出演者はそれぞれ関連するキャラクターのコスチュームを着て演奏しました。

魔笛は、遠山にとって特に思い入れのある作品です。子供の頃、モーツァルトの楽曲が大好きでよく弾いていたのですが、ある時母に「アマデウス」というモーツァルトの伝記的映画を見に連れて行ってもらいました。その映画の中で魔笛の夜の女王が歌うシーンがあるのですが、それに衝撃を受けて以来、いつか弾いてみたいと思っていましたが、ついに今回プログラムに含めることができました。尚、後から聞いた話では、コンサートにいらしていたある一人の生徒が、例の夜の女王の曲をとても気に入ったらしくずっと歌っていたそうです。

ストラヴィンスキーのEight Instrumental Miniatureは、Les cinq doigtsというピアノ曲からのオーケストラ編曲(または再作曲)です。ストラヴィンスキーはLes Cinq Doigtsを作曲してから約四十年後、Eight Instrumental Miniaturesに編曲し直した際に、音をかなり追加し複雑化していますが、原曲では左右の手の各指をピアノの5つの鍵盤の上に置き、そこから動かさずに弾くという、大変シンプルなアイデアからつくられています。Les Cinq Doigtsとはフランス語で5本の指という意味です。

次くサティのNine Children’s Piecesも実は、Les cinq doigtsと同じアイデアに依っています。つまり、左右手各指をそれぞれピアノの定められた5つの鍵盤にあてがうということです。このような限定した書き方は他にもバルトークの作品等に見られます。右手左手の指5本づつ、つまり合わせてたったの10のピッチだけで作られているにもかかわらず、多彩な組み合わせや非凡な反復によって、決して飽きさせない構造になっているのはさすがです。Nine Children’s Piecesでは変化記号が一度も使われず、ピアノの白鍵のみ=C Major Scaleのセットで作られていますが、C Majorの調的な語法(終止法等)はほとんど避けられているために、古典的な音楽とはずいぶん違って聞こえます。Nine Children’s Piecesにはサティのその他の多くのピアノ曲と同様に、”風変わりな”テクストが添えられていますが、これを今回音楽とともに朗読(英語:原文はフランス語)しました。

終曲の Cinema は、モーツァルトにおける「魔笛」と同じように、サティの生涯最後の作品です。ダダの詩人、フランシス・ピカビアのRelâche というバレエの幕間に演奏される映画(シネマ)の伴奏音楽として作曲されました。ピカビアによるバレエと映画の台本には、プロットらしきものはまるでなく、ひたすらナンセンスなカットの連続になっています。この曲を聞くとまず、反復の異様な多さが耳につくかもしれません。魅力的なパターンが次々に登場しますが、各々は調的・動機的に、あまり前後の関連性は感じられません。そうしてバラバラの寄せ集めの音楽はドラマ性を、または内的表現性を剥ぎ取られて、音の色彩の庭に開放されます。サティは反ロマン主義の人でした。この曲はずいぶん昔、鍵盤ハーモニカとギターの二重奏をはじめたころに弾いていましたが、今回の鍵盤ハーモニカ合奏のために編曲しなおしました。

これらのプログラムは、今回の演奏者があってこそのものでした。二度と同じ音はつくれないだけでなく、おそらく同じプログラムを組むことも、この先もうできないと思います。

音楽は考えても、とにかく音を出してみないとわからない事だらけです。今回もまた、あたらしい発見がたくさんありました。皆さまのおかげで、良いコンサートができたと思います。本当にありがとうございました。今後とも音の木音楽教室をよろしくお願い致します。

モーツァルト&夜の女王と

ウクレレ、ギター&朗読

すてきな手作りカップケーキをいただきました!

魔笛より


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