27 Jun 2018

ピアノ調律師

ギターやバイオリンと違って、ピアノの場合、演奏家とは別に調律を専門にする調律師と呼ばれる人たちがいます。ピアノの調律自体は、他の楽器に比べると大変ではありますが、調律器具さえあれば、自分で行うことも可能です。音の木教室でも器具をいくつか揃えております。しかし、良い調律師の仕事というのは、本当に職人芸=アートです。楽器の持っているほんとうの力を引き出してくれる、そういう仕事だと思います。

しかし最近、他のピアノの先生方ともお話していたのですが、この界隈でなかなか良い調律師にめぐりあうことは難しいようです。この間は某有名楽器メーカーで仕事をされている調律師に頼んでみました。スマートフォンに入れたチューナーアプリを見ながら30分とかからずに終えられていました。私達が出会った調律師の中では最短時間だと思います。実際、そういうアプリを利用すること、短時間で終えることそれ自体には問題はないでしょう。しかし、2週間ほど経って、以前にもましてひどく調律が狂っている所をみると、それがどういう仕事であったかを物語っています。その方は、調律は生活のためにやっていて、あまり好きじゃない、早くリタイヤしたいと言っていました。調律師だったお父さんのコネもあって、ロンドンの様々な、有名な会場等でも忙しくされているようですが、残念ながらうちの教室のピアノをまかせることはできないでしょう。

以前、私(遠山)が子供の頃習っていた先生とお話していた時に、先生がいつもお願いしている調律師の話題が出た事があります。先生はある時に、特に理由はなかったようなのですが、いつもとは違う調律師に調律を頼んだそうです。その調律師の方は、調律をはじめる前に、まず「どんな音をお望みですか」と先生に尋ねらたそうですが、今までそのような事を聞かれたことが無いのでとても困ってしまったと仰っていました。それから調律をはじめたものの、調律師の方はピアノの部屋に籠もったきり一時間、二時間…何時になっても終わらない。あまりに終わらないので先生は不安になりましたが、結局夜になって、始めてから終わるまでに10時間くらいいらっしゃったそうです。先生は実は、それまでずっと自分のピアノの響きが好きではなかったそうなのですが、その調律の後には、同じピアノとは思えないくらい響きが変わったとおっしゃっていました。それをきっかけに先生の調律の、そして楽器への意識も変わったそうです。それ以来、調律はその調律師の方にお願いしているそうですが、それだけでなく、尊敬できる音楽家として、自分の演奏も聞いてもらっていると仰っていました。ピアニストと調律師は一緒に音楽を作るパートナーというわけです。ピアノを弾くものとして、そのような調律をされる方にいつかお会いできるのが夢ですね。

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